非居住外国人の不動産購入: 登記時の不動産取得税 3-4%・固定資産税 年1.4%・売却時の源泉徴収 10.21%。租税協定で軽減可能な国も。

非居住の外国人が日本の不動産を持つと、取得・保有・賃貸・売却・相続の5つの場面それぞれで違う税がかかります。税率自体は公開情報ですが、「いつ・誰に・いくら」を知らないと、源泉徴収で取られすぎたまま還付を取り逃したり、相続で想定外の負担を抱えたりします。基本構造を押さえましょう。

1. 取得時の税金

不動産取得税評価額の 3〜4%
登録免許税(所有権移転)評価額の 2%
登録免許税(抵当権設定)借入額の 0.4%
印紙税1万円〜10万円
消費税(建物のみ)10%

取得時の諸費用は建物価格のおおむね 5〜8%を見ておきます。注意したいのは支払いのタイミングです。登録免許税と印紙税は登記・契約の時点で必要ですが、不動産取得税は取得後しばらく(数ヶ月後)に納税通知書が届く後払い。引渡しで資金を使い切ると後から足りなくなるため、価格の1割弱を別枠で確保しておくのが安全です。土地は消費税非課税、建物のみ10%が課税対象である点も覚えておきましょう。

2. 保有時の税金(毎年)

固定資産税・都市計画税は毎年1月1日時点の所有者に課税され、年4回に分けて納付します。重要なのが住宅用地の軽減で、200㎡以下の「小規模住宅用地」は固定資産税の課税標準が1/6、都市計画税が1/3に下がります。更地や事業用地ではこの軽減が効かないため、同じ土地でも住宅が建っているかどうかで税額が大きく変わります。非居住者は納税管理人(後述)を通じて納付するのが通常です。

3. 賃貸収入の課税

非居住者の賃料収入は、まず20.42% が源泉徴収されます(多くは管理会社が家賃から天引き)。ただしこれは仮の徴収にすぎません。確定申告で必要経費を差し引けば、納め過ぎた分が還付されます。控除できる主な経費は、建物の減価償却費・管理委託費・修繕費・借入金利・固定資産税・損害保険料など。これらを積み上げると課税所得が大きく圧縮され、実効税率は5〜15%程度まで下がることも珍しくありません。「源泉で取られて終わり」にせず、毎年3月15日までの申告を必ず行うことが、海外オーナーが最も得をするポイントです。

4. 売却時の譲渡所得税

保有期間税率
5年以下(短期)39.63%(所得税30%+住民税9%+復興1.63%)
5年超(長期)20.315%
居住用 3,000万円特別控除居住者のみ(非居住者不可)

税率が倍近く変わる短期・長期の境目は、「売った年の1月1日時点で保有5年を超えているか」で判定します。取得日からちょうど5年では足りず、暦年で線引きされる点に注意。課税対象は売却額そのものではなく、売却額−(取得費+譲渡費用)の譲渡益です。取得時の契約書・諸費用の領収書を保管しておくと、取得費を正しく計上でき税額を抑えられます。さらに非居住者が売る場合、買主が代金の10.21%を源泉徴収する仕組みがあり(一定額未満の居住用などは除外)、これも後の確定申告で精算します。

5. 相続税(最大の落とし穴)

見落とされがちですが、非居住者が持つ日本国内の不動産は、被相続人・相続人がどこに住んでいても日本の相続税の課税対象です。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」、最高税率は55%。不動産は現金と違って分割しにくく、評価額に対して相続税を現金で納める必要があるため、納税資金の準備が問題になりがちです。生前贈与での持分移転、資産管理法人の活用、生命保険による納税資金の確保など、生前の対策が決定的に重要。亡くなってからでは打てる手がほとんど残りません。

6. 贈与税

相続を待たずに資産を移す手段が贈与で、使い方次第で負担を大きく圧縮できます。代表が暦年贈与(年110万円まで非課税)で、毎年こつこつ移せば長期では大きな額になります。まとまった額を移すなら相続時精算課税(2,500万円まで贈与時非課税、相続時に精算)、夫婦間の居住用不動産には配偶者控除(2,000万円)も使えます。どれを選ぶかは資産規模・年齢・相続人の数で最適解が変わるため、相続税とセットで長期シミュレーションするのが定石です。

7. 租税条約による二重課税回避

「日本でも本国でも課税されて二重取りになるのでは」という不安は、租税条約で解消できます。日米・日中・日韓・日豪など主要国とは租税条約が結ばれており、日本で納めた税は本国の確定申告で外国税額控除として差し引けます。条約によって配当・利子・不動産所得の扱いや上限税率が異なるため、自国との条約内容を事前に確認しておくと、世界全体での実効税率を最小化できます。両国の税理士が連携できる体制を組むのが理想です。

8. 納税管理人

非居住者が日本で不動産を持つなら、日本国内に「納税管理人」を選任する義務があります。これは納税通知書の受領、確定申告書の提出、税務署とのやり取りを本人に代わって行う窓口で、通常は税理士(年契約でおおむね12〜30万円が目安)か、信頼できる日本在住者に依頼します。選任していないと納税通知が届かず、知らないうちに延滞が発生するリスクも。物件取得と同時に決めておくべき、最初の実務的ステップです。

「税金は専門家に丸投げ」では損をします。基本構造を理解したうえで、税理士・弁護士と長期戦略を組むのが、海外オーナーの正攻法です。

出典・参考