1. 用途地域と容積率の最大化
商業地域は容積率 400〜1300%、近隣商業 200〜400%。角地・道路斜線・天空率を活用すると、書面上の容積率より大きい建物が建つことも。建築士のボリュームチェックで±20%の差が出ます。事業性はこの初期検討でほぼ決まります。
2. 構造選定
- S造(鉄骨):5〜10階建てに最適、工期短い、柱なしの大空間
- SRC造:10〜20階建て、剛性高い、デッドスペース少ない
- CFT造:20階超、柱を細くできる、グレード A クラス向け
3. レンタブル比の最適化
レンタブル比=賃貸可能面積 ÷ 延床面積。標準的なオフィスビルは70〜80%。コア(EVホール・階段・トイレ)を中央に集約することで賃貸面積を最大化します。1%の差が10年間で数千万円の収益差に。
4. 設備の標準
| 床 | OA フロア(H100〜150mm)標準 |
| 天井 | システム天井、H2,700mm 以上推奨 |
| 空調 | 個別空調 or セントラル+ゾーン制御 |
| エレベーター | 1台/2,000〜3,000㎡(東京基準) |
| 電気 | 30VA/㎡以上、非常電源 72時間以上 |
5. 規制と附置義務
駐車場附置義務(敷地面積に応じて 1〜数十台)、駐輪場附置義務、緑化義務、福祉設備、非常階段。これらが建物体積を 5〜10% 削ります。計画初期に織り込まないと、後から有効面積が痩せます。
6. 工期と予算
- 5階建て:15〜18ヶ月 / 坪単価 120〜180万円
- 10階建て:24〜30ヶ月 / 坪単価 150〜220万円
- 20階建て:30〜42ヶ月 / 坪単価 200〜300万円
7. テナントが求める性能
賃料単価を左右するのは立地だけではありません。天井高・無柱スパン・床荷重・電気容量・通信インフラが、入居企業の業種選好を決めます。IT・金融系は高い電気容量とOA床を、士業・サービス系は分割しやすい基準階を求めます。竣工後に変えにくい性能ほど、設計段階で余裕を持たせるのが鉄則です。
8. グレード別の仕様比較
オフィスは「スタンダード」と「グレードA(ハイグレード)」で求められる仕様が大きく異なります。下表は代表的な指標の目安です。
| 項目 | スタンダード | グレードA |
|---|---|---|
| 天井高 | 2,600〜2,700mm | 2,800mm 以上 |
| 無柱スパン | 柱割りあり | 大スパン無柱 |
| 電気容量 | 30〜50VA/㎡ | 60VA/㎡ 以上 |
| 非常電源 | 72時間 | 72時間+BCP対応 |
| 環境認証 | 任意 | 取得を前提に設計 |
9. BCPと省エネ・環境認証
近年は事業継続性(BCP)と省エネ性能がテナント選定の重要軸になっています。非常用発電、給水確保、浸水対策に加え、断熱・高効率空調・LED で運用コストを抑える設計が評価されます。環境認証への適合は、優良テナントの誘致と賃料の維持に直結します。初期コストはかかりますが、収益不動産としての競争力を長期に支えます。
オフィスビルは「収益不動産」。設計の良し悪しは竣工後の賃料単価=㎡あたり3,000〜10,000円の差に直結します。